ソフトバンクグループの株価が2025年11月25日に急落し、創業者兼CEOである孫正義氏の資産から約50億ドル(約7750億円)が消失しました。この背景には、Googleの新しいAIモデル「Gemini 3」への高い評価と、ソフトバンクが巨額出資するOpenAIの競争力に対する懸念があります。
株価急落の全貌
ソフトバンク株は11月25日の東京証券取引所で一時11%安となり、9.95%安の1万5390円で引けました。この結果、孫正義氏はForbesリアルタイム億万長者ランキングで32位に後退しました。
さらに深刻なのは、ソフトバンク株が10月下旬のピークから約40%下落し、時価総額で16兆円(約1020億ドル)以上が消失したことです。
Gemini 3がもたらした懸念
11月18日にGoogleが発表した「Gemini 3」は、市場で高い評価を受けています。Gemini 3 Proは、AIベンチマークのLMArenaで1501 Eloを達成し、史上初めて1500ポイントの壁を突破したモデルとなりました。
投資家の間では、OpenAIが持つAI市場での優位性に疑問が生じており、これがソフトバンクの大規模なOpenAI投資に対する不安につながっています。
ソフトバンクのOpenAI投資戦略
ソフトバンクは、OpenAIへの投資資金を確保するため、積極的な資産売却を進めてきました:
- Nvidia株の全株売却: 58億ドル相当(3210万株)を10月に売却
- T-Mobile US株の売却: OpenAI投資資金として売却
- 総投資額: 320億ドル(OpenAIへの累計コミットメント)
- 12月の支払い: 225億ドルをVision Fund 2を通じて追加投資予定
ソフトバンクのCFO後藤芳光氏は「今年のOpenAIへの投資は300億ドル以上が必要。そのためには既存資産の売却が不可欠」と述べています。
資金調達の課題
MST FinancialのDavid Gibson氏はFinancial Timesに対し、ソフトバンクは約1130億ドルの投資をコミットしているが、実際の資金調達能力は585億ドルに過ぎないと指摘しています。
この資金ギャップを埋めるため、ソフトバンクは:
- Arm株を担保にした50億ドルのマージンローンを確保
- OpenAI向けに85億ドルのブリッジローンを調達
「世紀の空売り」投資家からの警告
2008年の金融危機を予測したことで知られる投資家マイケル・バリー氏は、先週OpenAIを「AI業界全体における循環融資のリンチピン(要)」と批判しました。
ブルームバーグのコラムでも、孫氏の投資パターンとWeWorkとOpenAIの収益構造に類似点があるとの懸念が指摘されています。
OpenAIの現状と課題
OpenAIは今後5年間で1兆ドル以上の支出を計画していますが、多くのアナリストはこの目標が非現実的だと考えています。ロイターによると、OpenAIの損失は拡大を続けており、まだ黒字化には至っていません。
さらに、OpenAI幹部が政府支援の必要性について言及したことも、資金調達に関する疑問を深めています。
スターゲート・プロジェクトの行方
トランプ政権が発表した「スターゲート」プロジェクト(ソフトバンク、OpenAI、Oracleによる1000億ドル規模のAIインフラ投資)についても、関税問題や資金調達の懸念から進展に遅れが出ているとの報道があります。
孫氏はスターゲートの会長を務め、ソフトバンクGが資金調達、OpenAIが運営管理を担当する予定です。
今後の展望
ソフトバンクは今後もOpenAIへの投資を継続する方針ですが、以下のリスク要因が残されています:
- 競争激化: Google、Anthropic、Metaなど競合他社の追い上げ
- 資金調達: 投資コミットメントと実際の調達能力のギャップ
- 収益化の不確実性: OpenAIの黒字化時期が不透明
- 市場センチメント: AI銘柄全体への投資家の警戒感
AI業界への投資熱は続いているものの、今回の株価急落は、AIバブルのリスクを市場が再認識し始めた兆候かもしれません。